// きみへ – chijou no sora

きみへ

十年前のきみのことを もう大分忘れてしまった
二十年前のきみのことは おぼろげな夢の中

飛ばしたシャボン玉の行先と 昼間の月の正体と
ラスボスの倒し方だけ
あと 今日の夕ご飯のことだけ
考えてた

謝らなくてはいけないことばかり
言い訳を聞いてくれるのなら
それなりに頑張ってきたのだと

今日という日をこなして 明日をやり過ごして
それなりと思えるものを
きみに残していけるように

きみは何も言わないだろう
頷いて許してくれるのだろう

でも
でも

十年後のきみに 聞いてみたいことがある
きみは誰かと 笑ってるか
二十年後のきみは 
たくさんのありがとうに囲まれているか
昨日を見て 今日を見て 明日を見て
ありがとうと言っているか
ありがとうと言ってくれるか

きみはそれには答えないだろう
ただ 充分だと言ってくれるのだろう

でも
でも

もう少しだけ ほんの少しだけ
昨日の続きじゃない今日を
見ていたところと違うものを
見えないものを 見たいものを

飛ばしたシャボン玉の行き先を 昼間の月の正体を
ラスボスと共に生きる方法を
無限に食べていけるものを

そばにあって いま そばにないもの
時間が連れていったもの
あの日のきみが見ていたもの
まだ見えてない 欲しいもの

十年後のきみに 謝らなくて済むように
二十年後のきみに
ありがとうといってもらえるように

きみに いま
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